久しぶりに安竜さんのブログを読んでいて、川本三郎の新著のことを知る。で、Amazonに発注。安竜さんは旺盛に本を読み映画を観、ブログを更新している。見習わなくっちゃ。
――通常こういう場ですと、受賞が決まった方に「おめでとうございます」という言葉を投げかけてから質問するのが通例なのですが、ためらってしまう。受賞について喜んでいらっしゃるんでしょうか。
「まったく喜んではおりません。はた迷惑なことだと思っています。80歳の人間にこのような賞を与えるという事態が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております。もっともっと若い方、私は、順当であればいしいしんじさんがおとりになるべきだと思っていましたが、今回の作品が必ずしもそれにふさわしいものではないということで、選考委員の方がいわば、蓮實を選ぶという暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは非常に迷惑な話であると思っています」
引用:「80歳の私に…はた迷惑」三島由紀夫賞の蓮實重彦さん:朝日新聞デジタル
第29回三島由紀夫賞を受賞した蓮実重彦の記者会見の一問一答が、面白い。
――伯爵夫人と若い青年との出会いというのが、蓮實さんが読んだり映画でご覧になったものが知らずに来たのか。それとも最初に伯爵夫人のような女性が先に来たのか、あるいは青年が先に来たのでしょうか。
「私を不機嫌にさせる限りの質問ですのでお答えしません」
このように発話する御仁を相手では文芸記者も大変だ。逆に言えば、文芸担当の技量が問われるところでもある。
ちなみに、今回の賞レースについて、亀山郁夫も候補に入っていることから「総長対決」などと、馬鹿な煽りをした新聞もあるけれど……バカだったね。
豪快にして大胆、下ネタとユーモア、美味しいもの、毛深い家族をこよなく愛していた――。 ロシア語会議通訳、エッセイスト、作家として活躍した米原万里さんが亡くなられて10年。 決して長くはない56年の生涯に書かれた著作は、今も愛され、広く読まれつづけています。 その才能と人柄を偲び、米原万里の生涯、作品をたどる回顧展、待望の都内初開催!
それほど熱心な読者であったわけではないが、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』『オリガ・モリソヴナの反語法』『打ちのめされるようなすごい本』などいくつか読んでいて、いずれも強い印象を受けた。
没後10年を記念し、出版社7社が「心に効く愛と毒舌」と共通の帯をつけた文庫フェアを開催するほか、上記の八重洲BCでのフェア、さらに佐藤優が編んだアンソロジー『偉くない「私」が一番自由』、妹の井上ユリの回想録『姉・米原万里』など出版も相次いでいる。
期間中、八重洲に行く用事があるといいのだが……
11月のハノイ旅行のためにベトナム関連書籍をいくつか神保町の内山書店で探す。ここは中国専門かと思ったら、他のアジア領域もカバーしていた。ベトナム関係もそれなりに充実。M・T君がホーチミンで編集している「SKETCH PRO」のバックナンバーまで置いてあったのにはびっくり。以下は本日購入した本。
カバーイメージ | タイトル | 著者 | 出版社 |
---|---|---|---|
![]() | フォーの国のことば: ベトナムを学び、ベトナムに学ぶ | 冨田健次 | 春風社 |
![]() | 観光コースでないベトナム―歴史・戦争・民族を知る旅 | 伊藤 千尋 | 高文研 |
![]() | ベトナムの風に吹かれて | 小松みゆき | 角川文庫 |
![]() | 週末ベトナムでちょっと一服 | 下川裕治, 阿部稔哉 | 朝日文庫 |
小松みゆき『ベトナムの風に吹かれて』は、大森一樹監督、松坂慶子・草村礼子ら出演で映画化され、10月に公開されるという。
⇒ (真相深層)出版、返品4割の重荷 取次の経営危機、「制度疲労」浮き彫り ネット巻き込み流通改革 :日本経済新聞:
出版科学研究所(東京・新宿)によると2014年の出版物の推定販売額は1兆6千億円でピークの1996年から約1兆円も減った。期待のかかる電子出版市場はまだ1400億円程度。KADOKAWA(角川)の角川歴彦会長は「20年近くも続く縮小傾向で生まれたひずみは大きい」と指摘する。
出版流通の制度疲労の原因は読者の「本離れ」だけではなく、流通制度にもあるとの指摘も出ている。原則として書店は一定期間売れなかった本を取次経由で出版社へ返品できる。この仕組みによって書店は在庫リスクを減らし、多彩な書籍や雑誌を店頭に置ける。 一方で書籍を返品する際の梱包や物流の費用は、書店と取次の負担となる。返品が増えると経費も増え書店や取次の収益を圧迫する。栗田の経営不振の一因もここにある。出版社にとっても返品は買い戻し負担と過剰在庫に直結する。14年には稼ぎ頭の雑誌の返品率が初めて40%に達した。 一部の出版社は書店の利益を増やし、売り切る努力を求める「責任販売制」に取り組むが、販売力で劣る中小書店などには重荷になりかねない。
本が売れないというわりには、出版点数は増えているはず。ただ、その多くが駄本なのだが。リアル書店が次々に潰れていくのであるから、旧来の取次が経営不振に陥るのは当然のこと。
一方、電子出版市場の伸び悩みというが、紙の本を買わない人が電子出版だから買うということはありえない。シュリンクするマーケットを電子がカバーできるはずもない。
むろん、紙本、電子本はそれぞれに利点・難点があり、使い分ければいいだけだ。私も最近は新書版などは電子書籍が併売されているのであれば、そちらを選択するようになった。ただ、肌ざわりと読書の楽しみについてばかりは、電子は紙に未来永劫かなわない。
やがて書籍流通はAmazon、楽天などのeコマース企業と大手印刷会社が完全に牛耳るようになるだろう。さらに図書館の危機も深刻化するだろう。TSUTAYAが運営すると図書館にTSUTAYAの在庫が押しつけられる、という恐るべき近未来もすでに語られている。
⇒ 『異郷被災――東北で暮らすコリアンにとっての3.11』:
2011年3月11日、被災三県(岩手・宮城・福島)で東日本大震災を体験した在日コリアンや結婚・留学あるいは仕事のために来日した韓国からの新定住者たちのライフヒストリー。30代から90代まで42人の聞き書きの記録。国境を超えて東日本大震災の経験を伝えるための試み。
赤坂憲雄氏が代表を務める「東日本大震災在日コリアン被災体験聞き書き調査プロジェクト」が編纂した。版元の「荒蝦夷」は仙台に拠点をおく出版社。「仙台学」や「叢書・東北の声」などを制作。
自民党の国会議員や三流小説家が、言論統制官のごとく「あの新聞をつぶせ!」と怒号する時代がやってまいりました。検閲に魅了される国家主義者たちが、戦後70年の節目に亡霊のように蘇る。雑誌「考える人」メールマガジンの河野通和編集長のエッセイに触発されて……
「生きてゐる兵隊」で発禁処分を受けた達三.その裁判では何が問われたのか.また,戦後のGHQの検閲で問われたこととは? 公判資料や本人の日記,幻の原稿など未公開資料も多数駆使して,言論統制の時代の実像に迫る.取材し報道することの意味を厳しく問い続けて来た著者が抑えがたい自らの問いを発しながら綴る入魂の一冊.
⇒ 佐藤卓己『言論統制──情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』中公新書:
戦後のジャーナリズム研究で、鈴木庫三は最も悪名高い軍人である。戦時中、非協力的な出版社を恫喝し、用紙配給を盾に言論統制を行った張本人とされる。超人的な勉励の末、陸軍から東京帝国大学に派遣された鈴木は、戦争指導の柱となる国防国家の理論を生み出した教育将校でもあった。
鈴木の著作や日記を、各種証言と照らし合わせ、「悪名」成立のプロセスを追うと、通説を覆す事実が続出した。言論弾圧史への新たな照明。
娘・ミミコから見た獏さんの素顔
「パパはね、借金をしたり人のお古をもらったりして暮らしているけれど、人間以外のものにはなりたくないといつも思って生きているんだよ」(「お墓の中の私のパパ」)「山之口獏は人間に絶望し、その絶望を自分のみっともない体の一部のようにたずさえて生きていた詩人である――。パパの微笑の温かさも優しさも私には全てそこから出ているような気がして仕方がないのです」。 父・山之口獏を通して、人間の生への洞察を深める、出色の評伝集。長く愛されつづけた『父・山之口獏』を大幅増補する、待望の新版。2,500円+税/ISBN:978-4-7837-1667-9/2010年12月刊
人はなぜスポーツをするのか。近代スポーツの母国イギリス、そしてヨーロッパ全域の球技の歴史とプレースタイルを詳説し、「スポーツを楽しむこと」の淵源に迫る。2,800円+税
ごみ問題の誕生は、日本の近代化・産業発展と表裏一体の関係にある。本書は、この問題を通じて日本近代史を読み解くものである。開国で江戸の街はどう変わったか? 松方デフレがごみ問題に与えた影響とは? 与謝野晶子はなぜ廃物利用を批判したのか? 東條英機がごみを視察した理由とは?
ごみにまつわる詳細なデータと象徴的なエピソードで、幕末から敗戦に至る日本の歩みを描き出した意欲作。ISBN:9784623073764/定価:2,200円+税/出版年月日:2015年06月15日
平井康嗣:著, 野中大樹:著 定価:1,800円+税/発行年月:2015年05月四六判/並製/256ページ ISBN978-4-8228-1533-2 C0036
寺尾紗穂著 定価:本体760円(税別)
3.11以前の原発労働はどんなものだったか? 音楽家・寺尾紗穂が原発労働者たちを訪ね歩き、その声に耳をすませたルポタージュ。
発売日:2015年05月22日定価:本体800円 + 税判型:新書判ISBN 978-4-575-15460-3
"THE VICEROY OF OUIDAH" ブルース・チャトウィン著/旦敬介訳/大西洋の両岸、二世紀の時間を舞台に、常軌を逸した出来事の連鎖の中のきらめく一瞬をとらえた映像のつらなりを通じて、人間に可能な残虐さ、酷薄さの極地が描かれ、それゆえに人間の強さ、情愛の深さが浮かび上がる。『パタゴニアにて』の次にチャトウィンが発表した、魂の震えるような作品。旅する作家・旦敬介による新訳。
⇒ 『分解してみました』PIE International + PIE BOOKS:
テクノロジーの進化は、もののサイズを小さくしたが、同時に、その構造を複雑にした。小さいものが、少ない部品で作られているとは限らない。普段使っているものの機能や構造・複雑性にあらためて気付かされると同時に、すべての部品が規則正しく並べられている美しさに、目を奪われること必至の写真集。
著者:トッド・マクレラン/Size:A4判 Format:210mm×297mmPages:120 + 観音8 Pages (Full color)/ISBN:978-4-7562-4670-7 C0072/発売元 パイ インターナショナル定価 (本体2,800円+税)
ジョン・コーンウェル著/松宮克昌訳/本体3,800円/ISBN 978-4-86182-356-5/発行2015.4
ロケット、ジェット機、原子力、自動車、情報通信、抗がん研究、バイオテクノロジー、物理学、数学、精神分析、健康科学、暗号システム、コンピュータ……21世紀のいま、私たちを支える科学技術は、ナチス・ドイツと戦争から生まれてきた。戦争と科学が結びつくとき、いったい、何が起きるのか? アインシュタイン、マックス・プランク、フロイト、ハイゼンベルク、フォン・ブラウンら総勢100人以上の科学者たちの葛藤と絶望、抵抗を描き切った傑作ノンフィクション。
近世初頭の出版業の開始以降を中心に、書籍を読む歴史を多角的に明らかにする論集の第1弾。生きるために本を読む多様なあり方。横田冬彦 編
出版年月/2015/05/ISBN9784582402919/判型・ページ数4-6 336ページ/本体 2,800円+税
Author: thinmustache(a.k.a. hiropon)
よしなしごとを書き散らかしております。