仮にそうだとしても、おかしい。米軍支援のために自衛隊を世界中に派遣すれば、日本防衛の資源を地球全体に拡散させてしまう。サッカーでいえば、自陣ゴールが危ない時に守備陣をフィールド全体に拡散させるようなものだ。と、サッカーの比喩で答えている。安倍首相の「隣家の火事」の比喩よりはるかにわかりやすい。
こう書くと、長谷部氏は憲法が専門で、国際安全保障のことはわからないのではとイチャモンをつける半可通がきっと出てくるのだが、例えば内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)まで勤めた元防衛官僚の柳澤協二氏も、今回の安保法制についての反対理由の一つに、長谷部氏と同様の問題を挙げている(『亡国の集団的自衛権』(集英社新書))。
個別的自衛権の確立と防衛設備の近代化を、日本国憲法の枠内で営々と積み重ねてきた元防衛官僚から見ても、いや、そういう職務に携わった人だからこそ、安倍自民党の集団的自衛権の拡大解釈は現実にそぐわないどころか、現実をより悪化させるものにみえるのだ。安保法案は北の核・ミサイル問題の根本的解決策ではない。日本が韓国、中国と信頼を回復し、それぞれの二国間関係を対立から協力へと変えてこそ、北朝鮮を孤立化させることができ、北朝鮮に対する抑止力を高められるはず。という部分に注目。東アジア安全保障の観点からすれば、米国以上に、中・韓との協調を失したままの北朝鮮対応はありえないのは自明のことだが、この問題が自民党からはまったく提起されていない。安保法制論議は、日本の外交下手をあらためて浮き彫りにする結果となっている。
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Author: thinmustache(a.k.a. hiropon)
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